UTAPIO
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EP『UTAPIO』は、いつか変わる世界の手前にいる感じで、いまその中間にあるような歌やメロディーなどを織り混ぜながら、いくつかの環世界を仮構してみたエレクトロニカ作品です。2017年に配信リリース。
「薔薇科三組」は、短めのボカロ曲で、アニソンのような曲。この曲は、AIチャットボットのように、言葉を発している主体がヒトなのかAIなのか、そのどちらでもあるかのような意識みたいなものをイメージしながら、ヒトだけを含んで閉じているわけではない「わたしたち」を想定してつくりました。言葉の意のようなものが「特定の誰か」に収斂されずに、脈絡もないかのような。でもバラバラではなく、ひとまとまりな歌唱です。
歌詞で「よるまじは みくんさからば(←)」となっている箇所は、歌いだしの「薔薇科三組はじまるよ」を逆再生させているの意。下は途中までの歌のパートの譜面。
「ソラ・アノヒ・ヴァーチャル」からはインスト曲です。規則と不規則の関係とか、持続と変化とか、繰返し(リピート)や繰返さない(1回限り)とか、そんな展開をしています。
「イドラ・ネビュラ」は、12/8拍子、48小節、テンポ96、タイム180秒と、12の倍数からなっています。また、ドラムの打ち方は同じパターンを繰り返さないランダムなものなのですが、スネアとバスドラがそれぞれ「12拍×12回=144回」ずつ叩いていて、こちらも12の倍数に。この曲はイドラの星雲のように輪郭が不透明で、模糊としています。
ラストはタイトル曲「UTAPIO」。「Io U To Piatio Utapio…」から始まる冒頭は、何語でもない言葉を話すメディウムがつくりだす環世界。そして「Mediumweltocene」は、「Medium」「Umwelt」「Anthropocene」の3つの言葉を繋げた言葉です。
「UTAPIO」はこのEPのなかではもっとも長く、曲中、綿々と色々なことをしていて、たとえば、サイコロを転がして音符を決めた箇所が…。ピアノ演奏の部分なのですが、「35/32」など半端な拍子も混在しています。
※このページはnoteの記事『UTAPIO - EP』を元に、若干の手を加えたものです。(2024年4月18日)